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近世植物・動物・鉱物図譜集成 第23巻 [錦?禾本譜 (1)]
〈2012年/平成24年1月〉
伊藤圭介「錦?禾本譜 (1)」


解　説
(一)伊藤圭介「錦?禾本譜」全二十三巻(別一一・二五・八　特七・九五　国立国会図書館所蔵)
　伊藤圭介(享和三年一月二十七日〔一八○三年二月十八日〕 - 明治三十四年〔一九○一年〕一月二十日〕の遺稿を孫の伊藤篤太郎が整理していて、国立国会図書館の伊藤文庫で保管されていたものを、再度編集して刊行したのがこの資料である。著作・編者の表記に関しては、「伊藤圭介　編著、伊藤篤太郎　編次、近世歴史資料研究会　重編)とするのが正当であろう。また紙幅が大量であるために、全二巻に分冊して刊行するに至った。前篇は、「近世植物・動物・鉱物図譜集成　第二十三巻　錦?禾本譜(一)」[第一巻から第十三巻まで]の表題を付して、二○一一年十一月三十日の奥附で、公刊されている。本篇は、「近世植物・動物・鉱物図譜集成　第二十四巻　錦?禾本譜(二)」の表題で、第十四巻から第十九巻まで、及び、錦?莎草譜(第一巻から第四巻まで)、芒類冩真(乾、坤)で構成されている。
　伊藤圭介や伊藤篤太郎の生涯や彼らの業績の分析にあたっては、他の巻に稿を譲りたい。
　禾本は単子葉植物のイネ目(イネ科・ホウライチク、ヤダケ、スズタケ、モウソウチク、イネ、マコモ、オオムギ、サトウキビ、ライムギ、コムギ、トウモロコシ、ハトムギ、ヒエなど)に属する植物一般を指すが、この稿本においては、カヤツリグサ目(カヤツリグサ科・カヤツリグサ、ヒトモトススキ、ハマスゲ、ワタスゲ、テンツキ、スゲ、シンジュガヤなど)、イグサ目(イグサ科すなわちトウシンソウ科・イ、ヌカボシソウなど)も含まれている。イネ目に属する植物は、動物の食料や飼料、醸造製品の原基物、いわゆる有用植物が多くを占めている。全体の目次構成は以下の通りである。

第二十三巻
*錦?禾本譜　第一巻・解剖図、植物名の「イ」から「ト」まで
*錦?禾本譜　第二巻・「稻譜　坤」
*錦?禾本譜　第三巻・「稻譜　乾」
*錦?禾本譜　第四巻・植物名の「チ」から「カ」まで(一)
*錦?禾本譜　第五巻・植物名の「チ」から「カ」まで(二)
*錦?禾本譜　第六巻・植物名の「カ」から「ト」まで
*錦?禾本譜　第七巻・植物名の「カ」
*錦?禾本譜　第八巻・植物名の「ヨ」
*錦?禾本譜　第九巻・植物名の「タ」から「ナ」まで
*錦?禾本譜　第十巻・植物名の「ラ」から「ク」まで
*錦?禾本譜　第十一巻・麦
*錦?禾本譜　第十二巻・植物名の「ヤ」から「テ」まで
*錦?禾本譜　第十三巻・植物名の「ア」(粟)

第二十四巻
*錦?禾本譜　第十四巻・植物名の「サ」(甘蔗すなわちサタウキビ)
*錦?禾本譜　第十五巻・植物名の「サ」から「キ」まで
*錦?禾本譜　第十六巻・植物名の「メ」から「ミ」まで
*錦?禾本譜　第十七巻・植物名の「ヱ」から「ス」まで
*錦?禾本譜　第十八巻・植物名の「ス」
*錦?禾本譜　第十九巻・未完成部分
*錦?莎草譜　第一巻
*錦?莎草譜　第二巻
*錦?莎草譜　第三巻
*錦?莎草譜　第四巻
*芒類冩真　乾
*芒類冩真　坤

　この原稿に関しては、編集も未整理な感を免れ得ないが、読者の研究に役立つことを目的として、極力再構成した次第である。また、約八千項目にものぼる、植物・動物・鉱物・人物・文献・一般事項名の詳細な索引(総合索引、分野別索引)を附してあるので、ぜひ有効に活用していただきたい。ただ、植物の土名、地方名、通称名などの表記や、江戸時代以前に製作された国文学・国史・博物・地誌に関係する文献、読み物、風土記、旅行記、名所図絵、中国の地誌書、地理学書、歴史書、博物学書、植物誌、動物誌などの古典籍からの豊富でかつ体系的な引用は、著編者の学識と博識の深さを窺わせるに十分な内容である。その意味においても、博物学、動物学、植物学のみならず、民俗学、言語学、日本経済史学などの諸分野においても、総合的かつ多角的な研究に活用されることを期待し、江湖にお奨めする次第である

　最後に、この全体の原稿と総索引が完成するにあたっては、仲村一心氏、仲村惠子氏の尽力によることが多大である。両氏の甚大な努力とその博識に感謝の念を禁じ得ない。さらに、これらの資料の撮影及び掲載に関して、さまざまなご配慮をいただいた国立国会図書館の諸氏に御礼の言葉を申しあげたい。

二○一二年二月十二日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　編者識