商品コード: ISBN4-7603-0187-9 C3321 \50000E

江戸後期・諸国産物帳集成・第20巻 [琉球]

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50,000円    (税込:55,000円)
第20巻 琉球

◎『琉球國志畧』
◎齊鯤・費錫章共編『續琉球國志畧卷之三』
◎徐葆光著、田村登和訳編『中山傳信録物産考』
◎呉継志『質問本草』

第二十巻の内容・序に代えて
 本巻では、江戸後期における琉球の動植物資料を紹介する。この地域に残る動・植物資料の成立過程には、次のような、日本他洲では見られない特異な経緯がある。
 ①清国の地誌の一環として清国人によって編集された琉球地誌中の動・植物資料。漢文で記載さ  れている。左掲の一および二の資料である。
②清国で編纂した資料の内、動・植物の部分を和訳したもの。左掲の三の資料である。
 ③島津家が琉球の動・植物の標本を採集させ、この標本またはその写生図を、清国の本草家に送  り、同定及び解説を依頼し、これに和名を添えて成稿したもの。下掲の四の資料である。
  いずれも中国の本草学に直結して編纂されたことが注目される。

一、「琉球國志畧卷之十四」周煌編(一七五九年刊)   国立国会図書館蔵 一五二・一七

 「琉球國志畧」は、当時清朝の勅令によって、省府県毎に編集された地誌に準じた琉球の地誌。目次は下記の通りである。卷之十四の物産の部分を採録した。
  「琉球国志畧」目次
 巻一、星野
 巻二、国統
 巻三、封貢
 巻四、上、輿地
    下、風俗
 巻五、山川
 巻六、府署、学校
 巻七、祠廟
 巻八、勝蹟
 巻九、爵秩
 巻十、賦役
 巻十一、典禮
 巻十二、兵刑
 巻十三、人物
 巻十四、物産
  穀 (稲他九種)
  貨 (糸他二十一種)
  疏 (菜他十二種)
  果 (藕他十八種)
  草 (萱他五十二種)
  木 (松他四十二種)
  竹 (苦竹他十種)
  禽 (雀他二十一種)
  獣 (牛他八種)
  鱗 (鮫他二十七種)
  介 (亀他二十二種)
  虫 (鼠他六種)
 巻十五、芸文
 巻十六、志余

二、「續琉球國志略卷之三」齊鯤、費錫章共編       国立国会図書館蔵 一五二・一七
 「續琉球國志略」は、前書の「琉球国志略」を補完する形で、一七七四年に編集され、清朝に納められた。卷之三の物産の項目に、前書に記載のない物産(海松、海柏、阿??、萬寿榮、福木、馬、螺貝、毛魚、鷹、緑菜など)、いわば特産物の解説の解説が見られるので、紹介する。この部分のみを採録した。

三、「中山傳信録物産考」徐葆光著、田村登和訳編     国立国会図書館蔵 一二五・三八

 徐葆光は、一七一八年に、清国の冊封副使として琉球を訪れ、帰国後の一七二一年に、琉球の地誌「中山傳信録」六巻を著わした(中山は琉球の別称である)。
 一七六九年、田村登(田村元雄、田村藍水)は「中山傳信録」中の産物(動・植物)の部分を和訳し、絵図を附して「物産考」巻一、二に編集した。さらに巻三として原文にない動植物を附録として追加し、全三巻に纏めた。巻によって体裁が、若干異なる(左記を参照)。
  「中山傳信録物産考」目次
巻一 中沢以正の序(中沢以正は医者で本草家、田村登の門下生)。 
琉球三十六嶋図
島毎の動植物三八種(絵図、漢名、和名、漢文解説)。
巻二 植物七四種、動物三四種、石二種(絵図、漢名、和名、漢文解説)。
    随地所生草品図説・植物二七種(絵図、漢名、和名、和文解説)。
  巻三(附録) 植物五七種、動物一一種(絵図、漢名、和名を記載。この巻では解説はおおか         た省かれている)。

四、「質問本草」            独立行政法人国立公文書館蔵 一九六・三八

 琉球の植物誌。成立は一七八五年。著・編者は、表向きは呉継志とされるが、村田経煩であろうと言われる。一八三七年刊行。
 さきに、一七七○年に鹿児島領八代領主島津重豪は、主として薩南諸島で採集させた植物標本に基づき、『琉球産物誌』を田村藍水に編纂させ(本集成第十八巻所収)た。さらに、一七七九年、重豪は本格的な琉球植物誌の編纂を企画し、その年に開園した吉野薬園の総裁村田経煩を、その編集責任者とした。その編集方法はいささか変わっていて、琉球および薩南諸島から採集した植物標本あるいはその絵図を、清国の本草学者達のもとへ送り、同定・解説を請い、これに和名を付して編集するという、手の込んだ手法であった。その場合、当時薩摩に滞在していたと言われている琉球の本草家呉継志が中核となって、校訂を進めるという方式が採用された。この呉継志という人物は架空の人物であるとする説が有力である(白井光太郎:一九○八年)。当時の薩摩藩、琉球、清国の関係上、表向きは琉球の本草学者が主体となって、清国の本草家に協力を要請し、その回答を取り纏め、薩摩藩はこれを受けて、和名を加えて成稿し、刊行を受け持つという、藩の動きが目立たないような方途を取る必要があったからであろうと言われている。呉継志が架空の人物であるとすれば、実の編著者は誰かということになる。藤原(藤堂)高猷序に「薬園署総裁村田経煩備加校訂附以和訓云々」とあることから、上野益三博士は、「村田経煩をその人とするのが自然であろう」と、述べている(詳細に関しては、上野益三『薩摩博物学史』[一九八二年刊行]を参照されたい)。

 一七八一年から一七八五年の間、呉継志の名前で、清国の四十五人の本草家などに数百点の植物標本・絵図などが送られ、その同定、解説が求められた。その内百四十点ほどについての回答が得られた。これらの各々に和名などを書き加えて、内編四冊、外編四冊、計八冊に綴じ合わせ、一七八五年八月、例言九則を載せて完結した。この原本と目されているものは、玉里文庫に蔵されている。
完成後約半世紀の間、刊行されず、一八三七年になって、ようやく薩摩府学から刊行された。編序は左の如くである。「内編」四巻、「外編」四巻、「附録」一巻から成り、「内編」は内治に効のあるもの、「外編」は外治に効あるもの、「附録」には琉球以外では見られない特有のものを納めたと言う。

  「質問本草」目次
  内編
   巻一
    序 藤原(藤堂)高猷(伊勢津領主)(一八三五年)
    序 菅原(前田)利保(越中富山領主)(一八三四年)
    例言 呉継志(一七八九年)
    質問本草目録、
    質問帖書牘及題跋 呉継志
    序・叙・書牘・跋 清国本草家一五氏
   巻二 黄精など 一○種
巻三  山慈姑など一五種
巻四  川烏頭など一六種
 外編
   巻一  爪子金など一八種
巻二  鐵樹など 二六種
巻三  犂頭草など二七種
巻四  野葡萄など二六種
 附録(刊本のみ)
    茘枝など 二二種
計  一六○種
   跋 幕臣 設楽貞丈(一八三六年)
   跋 薩摩藩医 曾愿(一八三七年)

 なお、刊本と稿本とでは若干の相違がある。稿本では、絵図は手彩色であるが、刊本では黒白版画である。稿本では質問と回答を問答形式で載せ、さらに再問を附記するが、刊本では問答形式ではなく、再問は省かれている。また、刊本には「附録」がある。

以上、貴重な文書の復刻刊行をご承認くださった国立国会図書館と独立行政法人国立公文書館に対しまして、厚くお礼を申し上げます。

                                                      編者識
二○○五年一月一五日(島津重豪侯の命日)
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