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ISBN4-7603-0186-0 C3321 \50000E
江戸後期・諸国産物帳集成・第19巻 [薩摩]
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50,000円 (税込:55,000円)
第19巻 薩摩
◎島津重豪『成形図説(羽属)』
第十九巻の内容・序に代えて
「成形圖?」(鳥之部) 東京国立博物館資料室蔵 和-二三八六
鹿児島領第八代領主島津重豪は、一七九二年、曾槃に「成形実録」(後に「成形圖?」と改名)の編集を命じた。当初予定したその内容は、農事、五穀、菜蔬、薬草、樹竹、虫豸、魚介、禽獣の八項目、全百巻で、特に農業関係に重きをおくものであった。江戸芝の島津家屋敷で編集が開始され、一七九九年からは白尾国柱が編集に加わった。一八○四年には、はじめの三○巻が脱稿・上梓された。その後約三○年後までに、巻三一から巻四五までが脱稿する。編集開始以来二度の江戸の大火、藩内の騒乱などがあり、編集はしばしば中断することがあったが、下記のような編序で完結した。虫豸、魚介、禽獣は省かれた。
農事部 巻一…一四 (刊本)
五穀部 巻一五…二○(刊本)
菜部 巻二一…三○(刊本)
菌部 巻三一(稿本)
薬草部 巻三一、巻三二…三四、巻三六、巻三九…四一(稿本)
草部 巻三五、巻三七…三八(稿本)
木部 巻四二…四四(稿本)
果部 巻四五(稿本)
以上の内巻一から巻三○までの刊本の部分は、後年二度復刻刊行されて、優れた「農書」として、廣く知られるところとなった(一九三二年に国本出版社から、一九七四年に国書刊行会から刊行された)。ところが、一九三二年に、土屋喬雄により、帝室博物館(現・東京国立博物館)に、それまで知られていなかった「成形図説・鳥之部」二○冊が存在することが知られ、本書は「農書」としてばかりではなく博物、とくに鳥類の書としても重要な資料であることが認められた。
ただし、この二○冊については、穂積実と内野儀の巳酉年(一八四九年か?)の序文(下記)があるが、著者名、編集経緯などに関する詳細な記録がない。推測するに、曾槃が書き残した草稿を、曾槃の没後、穂積実と内野儀が編集したものであろうか。
序
「(前略)此二十巻。顧従草稿中鈔出、而羽族凡三百餘品、名称形状、弁折臚列、及漢蕃所齎、珍産異種咸丹青肖貌、莫有遺載焉、則雖鈔本、世蓋有一、而未有二者、豈可弗寶玩哉、(後略)」
第一冊から第一二冊までは、彩色図、鳥名(漢名と同異名、和名と同異名)、解説を載せるが、第一三冊以降二○冊までは絵図だけが掲げられ、鳥名、解説は記されていない。未完の書である。未完ではあるが、これまでほとんど紹介されていない貴重な資料である。
中国、日本の古文献を数多く引用しているのが注目される。中国の文献は『庶物類纂』の援用が諸所に見られる。
二○冊の編序は以下の如くである。「羽属」「羽族」「禽部」等の用語は原文書に従った。鳥以外の部分が一○○巻になる予定であったので、鳥之部は巻一○一から始まっている。
「成形圖?」(鳥之部)
第一冊
巻一○一
序文
羽族提要
禽部第一 水禽類 (九種)
巻一○二
禽部第二 水禽類 (一三種)
第二冊
巻一○三
禽部第三 水禽類 (一三種)
第三冊
巻一○四
禽部第四 水禽類 (一五種)
第四冊
巻一○五
禽部第五 水禽類 (八種)
巻一○六(
禽部第六 水禽類 (六種)
巻一○七から巻一一○は欠号
第五冊
巻一一一
禽部第一二 原禽類 (九種)
第六冊
巻一一二
禽部第一二 原禽類 (一○種)
第七冊
巻一一三
禽部第一三 林禽類 (一二種)
第八冊
巻一一四
禽部第一四 林禽類 (六種)
第九冊
巻一一五
禽部第一五 林禽類 (五種)
第一○十冊
巻一一六
禽部第一六 林禽類 (一二種)
第一一冊
巻一一七
禽部第一七 林禽類 (一○種)
巻一一八
禽部第一八 林禽類 (一五種)
第一二冊
巻一一九
禽部第一九 林禽類 (四種)
巻一二○
禽部第二○ 林禽類 (一四種)
第一三冊 [以下鳥名及び説明文を欠く。巻号もない。]
(鷹類) (八種)
第一四冊
(鷹類) (一六種)
第一五冊
(?) (一三種)
第一六冊
(?) (二一種)
第一七冊
(鶏その他) (三二種)
第一八冊
(?) (二七種)
第一九冊
(?) (三○種)
第二○冊
(?) (四一種)
計 三四九種
本書の他に薩摩地方の鳥に関する文書としては、「薩摩鳥譜図鑑」、島津重豪著「鳥名便覧」(以上、国立国会図書館蔵)、「鳥類図鑑」(山階鳥類研究所蔵)などがある。 重豪がとくに鳥類に興味を持っていたことと関連があろう。 また、享保・元文年間の産物帳(薩摩、日向、大隅)にも、三国に生息する鳥名を多数載せる「享保・元文諸国産物帳集成」十八巻、を参照)。
貴重な文書の復刻刊行をご承諾くださった東京国立博物館資料館に厚くお礼を申し上げます。
編者識
二○○四年一一月重陽