商品コード: ISBN978-4-7603-0424-0 C3321 \50000E

第3巻 日本科学技術古典籍資料/測量篇[2]

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第3巻 日本科学技術古典籍資料/測量篇[2]

オクタント之記 完、算法量地捷解 前篇、測量集要、測量全義、測量術大成、分度餘術

解 説
 この巻においても、「測量篇(1)」と同様に、江戸時代の測量術に関する名著六編を取り上げた。天文学や数学の進歩と相俟って、測量学としての地位を確立しようとする時期の作品である。航海、検地、土木、建設、地図作成などの様々の分野で幅広く活用されていった現状を考察できる資料集成である。また、これらの資料は原文のままでも理解が出来ると判断し、あえて解読を実行しなかった。原本はいずれも「東北大学附属図書館」所蔵である。
(一)オクタント之記 完[林 二五三四]
 手書の翻訳書である。寛政十(一七九八)年の書写であると記されている。おそらく、「八円儀及其用法之記」(一七九八)はこの資料のことであると推定される。原書は、コルネリス・ドウエス著「Cornelis Douwes: Beshrijving van het Octant」(一七四九)である。訳者は蘭学者の志筑忠雄〈しづき ただお、宝暦十(一七六○)年 - 文化三年七月三日](一八○六年八月十六日)〉。享年四十七歳。長崎の光永寺に葬られた。
 オクタント(Octant)とは八分儀のことである。航海に用いて、天体の高度を測定して、船の位置を決定する器械である。四十五度(円周三百六十度の八分の一)の円弧を用いるのでこの名がある。六分儀の前身の機械である。六分儀は六十度(円周三百六十度の六分の一)の円弧を用いるので、この名称を与えられた。この資料は、オクタントの使用方法や原理などについて、初学者でも理解できるように、懇切丁寧に書かれた啓蒙を目的とした解説書である。所在が確認されているのはこの図書館のみである。
 志筑忠雄は、西洋の天文学・物理学・地理学・数学、海外事情、オランダ語、オランダ文法などの分野で名を成し、江戸時代の蘭学の発展に寄与した。本姓は中野氏、通称は忠次郎、字は季飛、季竜、飛卿。名は、盈長、後に忠雄。柳圃と号した。養父孫次郎の養子として、阿蘭陀通詞志筑本家八代目を継ぎ、安永五(一七七六)年には稽古通詞となったが、その後、辞職し、阿蘭陀通詞で西洋天文学に精通していた本木良永に師事した。生涯にわたって蘭書翻訳に熱中した。大槻玄幹、杉田玄白、新宮凉亭などとの交流が知られている。
 彼の著作は主に写本で伝わり、現在までに確認されているものは五十点近くにのぼる。それらは、成立・書写年代が不明な作品が多い。著作の半分近くは、西洋天文学及び物理学の蘭書本からの翻訳で、次に多いのがオランダ語・文法に関する著作で、全体の約三割を占める。前二者に比べると数は多くないが、地理学、海外事情に関する翻訳書も知られている。その訳述の内容と豊富さから、西洋科学に対する志筑忠雄の熱意と畏敬の念を感じることが出来る。主な訳著書に次の資料があげられる。
*「万国管窺」〈一七八二年 - 大航海時代のさまざまの旅行記の日本語訳。日本で初めてコーヒーについて言及〉
*「鎖国論」〈一八○一年 - エンゲルベルト・ケンペル著「日本誌」(一七二七年)のある一章の「日本国におい て自国人の出国、外国人の入国を禁じ、また、此国の世界諸国との交通を禁止するにきわめて当然なる理由」 の日本語訳本。「鎖国」という言葉を生んだ〉
*「暦象新書(上中下)」〈一七九八年から一八○二年 - 原著はジョン・ケイル(John KEILL, 一六七一年-一七二 一年)の「真正なる自然学および天文学への入門書」(Introductiones ad Veram Physicam et veram Astronomiam) (一七二五年)のオランダ語版(一七四一年)からの翻訳書。アイザック・ニュートンやヨハ ネス・ケプラ ーの生んだ法則・概念、+、-、÷、√といった記号を日本に紹介し、「遠心力」「求心力」「重力」「加速」「楕 円」などの用語について解説〉
*「二国会盟録」〈一八○六年 - ジャン-フランソワ・ジェルビヨン(Jean-Francois GERBILLON、一六五四  年-一七○七年、彼はフランス出身のイエズス会士,医学者。ルイ十四世が中国に派遣した宣教師団 の一員。 中国名は張誠または実斉。康煕帝に近侍して西洋数学などを教え信任を得た)が著した旅行記の日本語訳〉
(二)算法量地捷解 前篇 上 中 下[狩 七-二一一七○-三]
 市川運八郎方静閲、松澤鏡蔵信義編で、序文の年紀は文久辛酉(一八六一)年と書かれている。版本。日本各地の図書館で多数所藏されている。校閲者の市川方静〈いちかわ ほうせい、天保五(一八三四)年十月二十四日生まれ。明治三十六(一九○三)年十一月二十八日没〉。幕末から明治時代の和算家、測量家。陸奥白河藩の藩士。最上流の算学を学び、測量術・天文学を習得する。安政五(一八五八)年、測量器の「調方儀」を考案した。維新後、測量器の改良をかさねて、明治十九(一八八六)年、「方静儀」を製作した。のち郷里白河で塾をひらいた。70歳。通称は運八郎。不求庵、律襲斎と号した。
 測量機器や測量方法についての案内書である。豊富な図版を用いて、初学者でも理解できるような内容構成をとっている。この資料は「前篇」であるが、「後篇」は「国書総目録」にも見いだすことはできなかった。おそらく、未刊行であったと推定される。
(三)測量集要[林 二六○二]
この図書館にしか架蔵されていない。木村直方の編輯である。測量の基本知識となる三角形、多角形、円弧のさまざまな計算方法を図を用いて解説した啓蒙書である。「巻之上」が正角(一図~二十七図)、「巻之中」が斜三角・斜四角・斜五角(一図~六十四図)、「巻之下」が正弧三角・正弧三角(一図~三十二図、一図~四十九図)について解説されている。この資料の「巻之中」の最終丁が裏写りになっているが、写真撮影の瑕疵ではなく、原本の状態によるものと推定される。また、「巻之上」の最終丁では乱丁と思われる箇所もあるが、そのままに掲載した。
(四)測量全義[岡本文庫 九四三]
 手写本。全十巻。ヨーロッパ天文学の一大叢書「崇禎暦書(西洋新法歴書)」の三十七巻から四十六巻までの全十巻を抽出して編纂されたのがこの資料である。「崇禎暦書(西洋新法歴書)」は、明代の崇禎七(一六三四)年に完成した。徐光啓督修、羅雅谷?、湯若望訂である。徐光啓(一五六二-一六三三)は西洋天文学に基づいて改暦を行うことを計画し、アダム・シャール(湯若望)らの助力で完成したのが、この「崇禎暦書(西洋新法歴書)」である。この資料には数学書が含まれていて、「測量全義」には、さらに、球面三角法と三角関数表が取り上げられている。内容構成は以下の通りである。(第一巻)測直線三角形、(第二巻)測線上、(第三巻)測線下、(第四巻)測面上、(第五巻)測面下、(第六巻)測體、(第七巻)測曲線三角形、(第八巻)測球上大圏、(第九巻)測星、(第十巻)儀器図説、となっている。書写者は不明である。江戸中期の書写と推定される。
(五)測量術大成[林 二六○一-七]
 手写本。六巻七冊。全文が漢文で書かれている。「村井中漸傳書、中島尚翼自筆」の表記が見られる。彼ら二人の略歴は以下の通りである。中島尚翼〈なかじま なおすけ、宝暦二(一七五二)-文化十(一八一三)年七月十九日〉は数学家、字は敬輔、士鳳、奉橘堂と号した。京都の人、数学家として知られている。村井中漸〈むらい ちゅうぜん、宝永五(一七○八)年-寛政九(一七九七)年二月二十四日〉は江戸時代中期の和算家。京都の儒医。中根彦循に算学を学んだ。久留米藩主有馬頼?の知遇をえた。名は漸。平柯、痴道人と号す。「開商点兵算法」「算法童子問」などの著作が知られている。
 内容は以下の通りである。(第一巻)目録一、(第二巻)目録二、(第三巻)羅針盤測量、(第四巻)図説一、(第五巻)図説二、(第六巻)図説二[羅針圖譜]、(第七巻)根発之巻、の内容構成である。測量の基本的な用語や技術を伝達するために書かれた資料で、測量術の基本資料と言えよう。図も豊富で理解しやすい内容である。なお、
京大が所蔵する資料は、五冊本で、「測量器」「根発之巻」「測量術大成印可之巻繪圖」が附されている。
(六)分度餘術[狩 七-二一二○二-三]
 手写本。全三巻。六冊とするのは、各巻(上、中、下)が二部構成となっているためである。享保十三(一七二八)年成立。内閣文庫に六冊の自筆本が架蔵されている。著者の松宮俊仍〈まつみや としつぐ、貞享三(一六八六)年 - 安永九(一八○六)年七月二十五日](一八○六年六月二十四日)〉は、江戸時代中期の儒学者・思想家・兵学者である。通称は左司馬・主鈴、観山・東岳散史・観梅道人と号した。下野国足利郡板倉郷に前原氏の子として生まれる。北条氏如に北条流兵学を学んだ。宝暦・明和事件に連座したため、主著の版木などが悉く幕府によって没収・棄却され、現在伝わるものは、自筆本又は写本によってが殆どである。彼は、北条氏如とともに、幕府巡検使として、奥州二州および蝦夷にまで足を伸ばし、見聞を深め、晩年は著述や教授を業とした。 松宮俊仍は、規矩術を研究し、この「分度餘術」において、測地航海の事を述べている。また、和算家の建部賢弘とも交流があり、本書には、それらの知見を生かした測量術と天文学の真髄が随所にとりこまれている。本書には、中国の兵学書、オランダ由来の西洋測量術、そして建部から教えられた天文学の成果などが、雑然と盛り込まれている。基軸となっているのは北條流の兵学と、それに必要な測量術であるが、西洋の科学的知見あり、中国の知識あり、さらには和算の真髄も取り込まれていて、興味深い内容である。彼の博学多識、自由自在な折衷様式のすばらしさを、本書はまざまざと見せてくれる。

  
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科学技術古典籍資料シリーズの特色

(l)近世に創作された日本の科學・技術に関係する貴重な古典籍を網羅---貴重な資料が全国各地に散在しているために、日本の科學・技術に関連する第一次資料を網羅することはできなかった。今回はさまざまな資料を捜索・掲載し、日本の科學・技術の歴史全体を俯瞰できる内容とした。

(2)充実した内容と斬新な構成----初學者にも理解できるように、古代から近世末期までを俯瞰できる各分野ごとの科學・技術史年表、基本的な文献の解題目録、完璧な索引を作成し、内容を豊富化した。既存のさまざまな概念にとらわれずに、事実としての日本の科學・技術の歴史を明らかにすることを重視している。古代・中世に、中国より渡来した科學・技術は、江戸時代に独自の発展をとげ、この時代の中期以降に西洋の科學文化に接触し、さらなる歴史を形成した。本集成は、この発展の歴史を辿りながら、現代以降の科學・技術のさらなる発達に寄与できうる内容構成とした。

(3)あらゆる學問分野で活用できる資料集成----この資料のみで、日本の科學・技術史を俯瞰できるのが大きな特色。資料篇、文献解題篇、年表篇、索引篇のいずれからも読むことが可能で、さらなる研究に活用するために便利な資料。日本科學史、日本歴史の研究者のみならず、作家、ジャーナリスト、社会科學・自然科學分野の研究者なども活用できる、体系的な資料集成。

[当初この日本科学技術古典籍資料シリーズは、「日本科學技術古典籍資料集成」として、独自のシリーズで刊行の予定でしたが、古代及び中世の日本独自の文献を所蔵している機関が少なく、また、所蔵していたとしても、複製が困難なために、新たなシリーズとして発行することを断念致しました。さらに、江戸時代に科學技術研究が最盛期を迎えたことと、この時代に発行された資料がほとんどであることを勘案して、「近世歴史資料集成」シリーズに組み入れることにした次第です。深くお佗び致します。]

各巻本体価格 50,000円

[内容構成に若干の変更がある時は、ご了解下さい]

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